Mag-log in「お、覚えてなさい! フィーネッ!」
「落ち着きなさい! ジークハルト様がいらしているでしょう!?」
背後で私の名を憎々し気に叫ぶヘルマとそれを宥めるバルバラ夫人の声を聞きながら私とジークハルトはサロンを出た。
「それじゃ、ガゼボにでも行って話をしないかい?」
ジークハルトの提案に私も乗った。
「ええ、それがいいわ。あそこなら多分誰にも邪魔されないと思うから」
「……? そうかい? なら行こうか」
そ私とジークハルトは2人で並んで庭園へ向かった――
****空は雲一つない青空が広がり、初夏の心地よい風が木々を揺らしている。
ジークハルトは庭園にでるとすぐに私に質問してきた。
「フィーネ。廊下を歩いている時に気付いたのだけど、何だか使用人たちの君に対する態度が妙に感じたんだ」
ガゼボに向かって歩きながらジークハルトは私を見た。
「そう……やっぱり分った? 半年前に両親が馬車の事故で亡くなって、叔父家族がこの城に住み始めてからは今までここで勤めていた使用人たちの総入れ替えが行われたのよ」
「何だって? どうしてそんなことを……?」
「それは叔父家族が私をこの屋敷から孤立させる為よ。私から味方を全員奪いたかったのでしょうね……」
「でも確かに言われてみれば使用人の顔ぶれ……1人も見たことが無かったな……」
「それに使用人の半分は叔父家族の屋敷で働いていた使用人達なのよ。だからもとより彼らは全員叔父家族の味方なのよ」
「それにしても酷い話じゃないか? この屋敷の正当な後継者はフィーネ、君なのに……離れで暮らしているなんて。それじゃ以前本館で使っていた君の部屋は今どうなってるんだい?」
その時、丁度ガゼボに到着した。
「まずは座ってから説明するわ」
「そうだね」
2人でガゼボに入り、隣同士に座ると話の続きをすることにした。
「私の部屋は今、ヘルマが使っているのよ。それにお父様の執務室は叔父に、お母様の部屋は叔母に占拠されてしまったわ……。もう私は自由に出入りすることが出来なくなってしまったのよ……」
「フィーネ……。可哀相に……」
ジークハルトがそっと私の肩を抱き寄せた。
「それだけじゃないわ。私には面倒を見てくれる専属メイドが1人もいなくなってしまったの。洗濯と掃除はかろうじて面倒見て貰っているけれども、着替えや、お茶の支度は一切見て貰えないから自分で洗濯室へ行って洗濯済みの衣類を部屋に持って行ってるの。それに厨房にお茶を貰いに行っても誰も用意してくれないから自分でお湯を沸かしてお茶を入れているわ」
そんな状況なので、両親が亡くなってからは1日3回の食事とお茶のみとなってしまった。そして私に届いていたティーパーティーの招待状までヘルマに奪われるようになってしまった。
「何て酷い話なんだ……!」
私の肩を抱く手に力がこもる。
「叔父様は私が18歳の成人の誕生日を祝うまでは後見人となって、アドラー家を盛り立てると言っているけれど……実際は違うわ。3人でお金を湯水のように使っているのよ。このままでは……アドラー家は破滅してしまうかもしれない……」
そう思うとどうしようもなく悲しくなり、私は顔を覆い、涙を流した。
「フィーネ。僕はもう誕生日が来て18歳になっているけれども、フィーネの18歳の誕生日までは後半年ある。だけど、誕生日が来たらすぐに結婚式を挙げよう? うちの家紋のローゼンミュラー家とアドラー家が手を結べ、簡単にあの叔父家族を追い払うことが出来る。それまで……だから頑張ろう?」
ジークハルトが私を慰めてくれる。
「え、ええ……。ジークハルト様……」
そう、半年……後半年だけ我慢すれば……今の生活から抜け出せるのだ……。
けれど、その約束が果たされる事は無かった――
結局俺とフィオーネは休むどころか、何度も何度も飽きること無く身体を重ね……気付けば外はすっかり夕焼け色に染まっていた。「すまなかった……。結局フィオーネを休ませることが出来なくて……」愛しいフィオーネを胸に抱き寄せ、彼女の髪をすきながら謝罪した。「いいえ……いいんです。……思い出が作れたから……」最後の言葉は小さくて、良く聞き取ることが出来なかった。「え? 今……何か言ったか?」「いいえ。別に何も言っていません」そしてフィオーネは俺の胸に顔を摺り寄せ……たまらなくなった俺は再びフィオーネの唇を奪うと、彼女を抱いた――****19時――すっかり暗くなった人の気配が感じられない夜道を、俺とフィオーネはレンタカーで走っていた。「フィオーネ……」助手席に座るフィオーネを時折見る。彼女は強張った顔でただ前を向いて座り……身体は小刻みに震えていた。「大丈夫か? とても体調が悪そうだ……。無理に今夜アドラー城跡地に行く必要は無いんじゃないか?」するとフィオーネは首を振った。「いいえ……今夜でなければ駄目なのです」「そうか……? そこまで言うなら仕方ないが……」彼女は占い師であり、尋常ではありえない不思議な力を持っている。恐らく、今夜あの場所に行かなければならない理由があるのだろう。その時カーナビがポーンとなり、アドラー城跡地まで後5Kmを指示した。「ユリウスさん……私の話を聞いていただけますか?」突然フィオーネが話しかけてくる。「ああ、教えてくれ」フィオーネは一度頷き、静かに語り始めた。「丁度今から300年前のこの日……アドラー城で大量大虐殺が行われました。アドラー城で暮らす全ての使用人達、そして魔女と化したフィーネの叔父家族に、彼女の婚約者が全員殺されました」「え……? な、何だって……」あまりにも突然の話に驚いた。「彼等は魔女、フィーネの怒りを買い……恐らく最も残酷と思われる方法で殺害されました。……狼に喰い殺されたのです」「!」思わず、ハンドルを握る手に力がこもる。「使用人達はそれでもまだマシなほうでした。フィーネは狼達に使用人達は一撃で殺すよう命じたからです。恐らく彼等は痛みを感じることなく、死んでいったと思います。けれどアドラー伯爵家族と婚約者のジークハルトだけは違いました」「ジークハルト……?」初めて聞
青ざめるフィオーネの肩を抱えるように501号室の部屋に辿り着くと、すぐに彼女をベッドに寝かせた。「大丈夫か? フィオーネ」愛しい恋人の髪にそっと触れる。「ユリウスさん……。ごめんなさい……騒ぎを起こしてしまって……」フィオーネは青ざめた顔で謝罪してきた。「何故謝るんだ? それにしても失礼な老人だ。君の事を魔女だとは。アドラー城の話は真実かもしれないが、フィーネが魔女だと言う話を信じているなんて。第一君を魔女と言ったことは許せない」彼女の美しい黒髪を指ですきながら俺はフィオーネを見つめた。「……」フィオーネは青く美しい瞳で、少しの間俺を見つめていたが……やがて口を開いた。「ユリウスさん。私、疲れたので少し寝ますね。ユリウスさんも休んだ方がいいですよ? 今夜はアドラー城跡地へ行くのですから」フィオーネの言葉に戸惑った。機材は無駄になるけれども、俺はもうあの城跡地に行く気は無かったからだ。「え? あ……そうか、やはり行かないと駄目なのか……?」「ええ。……行かないのですか?」フィオーネはじっと俺を見つめる。「あ、いや……そう言う訳では無いんだが……てっきり、フィオーネが俺に憑りついている怨霊を払ってくれたとばかり思っていたから」するとフィオーネは首を振った。「いえ、まだ完全ではありません。今夜あの城へ行き、全てを終わらせるつもりです。あの城が呪われた大元を断ち切ります」「そんなことが出来るのか?」その言葉に目が丸くなる。「はい、出来ます。しかも……今夜が一番最適なのです」フィオーネはじっと俺を見つめる。その目には決意が見えた。「分った、君の言う通りにしよう」「でしたらユリウスさんも横になったほうがいいです」「あ、ああ。それじゃ」この部屋はシングル用だから生憎ベッドは一つしかない。「俺はこのソファで休むよ」そしてソファに移動しようとしたところ……。「……行かないで下さい」フィオーネに服の袖を掴まれた。「え?」「一緒に……隣で寝てくれますか……?」フィオーネの身体は何故か小刻みに震えている。「え……? けれど……」身体を休めろと言われているのに、フィオーネの隣で寝ようものなら俺の理性が持つはずがない。きっとまた激しく彼女の身体を求めてしまうに決まっている。「あ……それはまずいんだ……」「何故ですか?」
宿泊先のホテルに着いた頃、フィオーネは体調が悪そうに見えた。「大丈夫か? フィオーネ」「え、ええ……大丈夫よ……」けれど彼女の顔色は青ざめ、元気が無い。「部屋で休んだほうがいいな」「……ええ」短く返事をするフィオーネ。「ホテルの部屋の鍵を取ってくるから、ここで待っていてくれ」窓際置かれた大きなソファの上にフィオーネを座らせると受付カウンターへ向かった。「ユリウス・リチャードソンです。501号室の鍵をお願いします」フロントマンに声をかけた。「はい、リチャードソン様ですね? どうぞこちらになります」カウンターにキーを置いたフロントマンは小声で俺に尋ねてきた。「それで……アドラー城の呪いの方は……大丈夫だったのでしょうか……?」「ええ、お陰様でこの通り元気ですよ」「そうですか、それなら良かったです。ごゆっくりどうぞ」「ありがとう」そしてキーを受け取り、フィオーネの元へ向かおうと振り向いた時。「え? 誰だ? あれは……」フィオーネの正面には何処かで見覚えのある初老の男性が立っており、何かを話しかけている。男性の顔は青ざめている。「すみません、彼女の連れの者ですが……何かあったのですか?」急いでフィオーネの元へ行き、彼女の背後に立つと紳士に尋ねた。「ユリウスさん……」フィオーネの顔は青ざめたままだ。「何だ? 君は……この人物の連れなのか?」「え? ええ……そうですが……」首を傾げながら返事をする。「な、何ですと! あ、貴方は……この人物が何者か知らないのですか!?」紳士は顔を真っ赤にさせ、震えながらフィオーネを指さした。「ま、待って……やめて下さい……」フィオーネは益々青ざめ、紳士を止めようとしている。「この女は……魔女ですよ! お、恐ろしい魔女……フィーネ・アドラーです!」紳士は大きな声でフィーネを指差し、辺りにいた人々の視線は俺たちに集中している。「何を言っているのですか? 貴方は……」彼の話に半ば呆れながら俺は言った。「彼女のどこが魔女だと言うのです? 第一フィーネ・アドラーと言う魔女は300年以上昔の話ですよね? 魔女が今もこの世に存在しているはずが無いでしょう?」「貴方は何もご存知ないからだ……あれは今から60年以上昔のことだが、今でもはっきり覚えているぞ?お前は隣町でピアニストをしていただろ
「フィオーネ、今日も占いの仕事があるのか?」すっかり恋人同士の気分になっていた俺はフィオーネと2人、ホテルのカフェで朝食をとりながら尋ねた。「え、ええ。でも……もう、そんなことしなくてもいいのだけど……」フィオーネはスープを飲みながら返事をした。俺はその言葉を前向きにとらえていた。「ああ、そうさ。もう無理に働く必要は無い。俺はルポライターだけど、ミステリー小説家でもあるんだ。こう見えても結構売れっ子なんだ。フィオーネを養ってあげられるくらいの貯蓄はあるから安心していいからな?」聞くところによるとフィオーネには身寄りが無いらしい。つまり、家のしがらみが何も無いということだ。「え? ユリウスさん。今の言葉の意味って……?」フィオーネが俺を見て首を傾げた。……本当になんて愛らしい女性なのだろう。彼女を見ているだけで、愛しさが込み上げてくる。恋人同士になれたことが今でも信じられなかった。「ユリウスさん?」再度、フィオーネが俺の名を呼び……我に返った。「あ、ああ。ごめん……フィオーネがあまりにも美しいから、思わず見惚れてしまったんだ」素直に自分の気持を語ると、フィオーネは頬を赤く染めた。「そ、そんな……美しいだなんて……」「本当だよ。俺は今までの人生で君程美しく、ミステリアスな女性を見たことがない。それで、さっきの話の続きだけど……フィオーネ。俺と一緒に暮らそう」テーブルの上に乗せた彼女の細く、白い手に自分の手を重ねる。「え? い、一緒に暮らすって……?」「うん、俺はルポライターにミステリー小説作家だから、特に何所かに定住する必要は無いんだ。フィオーネは俺に言っただろう? 一つの所には長くとどまることが出来ないって。まさに俺みたいな男がフィオーネにはぴったりだと思わないか?」他の誰にもフィオーネを奪われたくなかったので、つい強気な発言をしてしまった。「ええ……そうね……。なら、これからよろしくお願いします」フィオーネは頭をさげてきた。「え……? 本当に? 本当にこれから一緒に暮らしてくれるのか?」「……はい」嬉しくて、頷くフィオーネの手を再度強く握りしめた――**** フィオーネとアドラー城跡地に向かうのは20時。それまでの時間を恋人同士として彼女と過ごしたかった。そしてフィオーネに尋ねた。何所か行きたい場所は無いかと…
明け方―― 俺とフィオーネは一晩中、互いの身体を求め合い……今、彼女は疲れ切った様子で俺の腕の中で静かに寝息を立てている。フィオーネを抱いたからだろうか……?疲れてはいたものの、あれ程どうしようもなく寒気が酷かった身体は元通りになっていた。「フィオーネ……愛している……」長い黒髪にそっと触れ、眠っている彼女にキスするとフィオーネは目を覚ました。「あ……ユリウスさん……。体調の方はどう……んっ」俺はまだ話そうとしていた彼女の唇をキスで塞ぎながら囁く。「ありがとう。フィオーネのお陰ですっかり体調は良くなったよ」彼女の細い身体を強く抱きしめた。「フィオーネ……こんなことになって、順番が逆になってしまったけど……君を愛している。俺の恋人になって欲しい」そしてさらに強く彼女を抱きしめる。「え……?」フィオーネの身体がピクリと動いた。「ユ、ユリウスさん……。い、今何て言ったのですか……?」「何度でも言うよ。俺は君を愛している。どうか恋人になって欲しい。……大切にするから」愛しい彼女の髪を撫でながら耳元で囁く。すると彼女は俺の腕の中で首を振った。「駄目です……それは……無理です……」「え……? 何だって……?」その言葉に耳を疑った。「何故だ? 君も……俺のことを少しは思ってくれていたんじゃなかったのか? だからこそ初めてだったのに、俺に……全部捧げてくれたのだろう?」フィオーネは男を知らなかった。それなのに怨霊に憑りつかれた俺を救う為にその身体を捧げてくれた。それだけでも彼女を愛する理由として十分だった。しかし、フィオーネは悲し気に首を振る。「いいえ……違います。私は……私の罪のせいで、あの怨霊を作りだしてしまいました。そしてあの土地は呪われてしまったのです。今まで多くの人達がアドラー城の呪いに触れて死んでいきました。けれど私には……どうすることも出来ませんでした。もっと早くに知っていれば……助けてあげることが出来たのに……」彼女は俺の腕の中ですすり泣いている。「……」フィオーネの長い黒髪に触れながら黙って話を聞いていた。「わ、私は……ある事情から……一つの所には長くとどまることが出来ないのです。今回は久々にこの国に戻ってきました。そして……ユリウスさん、貴方にお会いしたのです。アドラー城の怨霊の呪いに触れてしまった貴方
フィオーネの唇は、とても甘かった。貪るように唇を重ねながら1枚ずつ彼女の服を脱がしていく。「んっ……んんっ……」真っ赤になりながらも俺の舌を受け入れるフィオーネの姿に、増々煽られる。互いに言葉を交わすことなく、キスを交わし……彼女を全裸にしたところでようやく唇を離し、フィオーネを見つめる。オレンジ色のライトにぼんやり照らされたフィオーネの裸体。真っ白な肌に形の良い胸。くびれた腰に、折れそうなほどに細い手足……。彼女は顔だけではなく、スタイルもとても美しかったのだ。「フィオーネ……とても奇麗だ……」するとフィオーネは恥ずかしいのか、真っ赤になる。「あ、あんまり見ないでください……は、恥ずかしいので……んっ」再び唇を重ね、彼女の唇を塞ぐ。「んっんっんん……」舌を絡めとる深いキスをしながら、彼女の肌に触れていく。柔らかな胸を揉みながら、薄く色付く先端を口に含んで舌を這わせる。「ん……はぁっあっあっあぁん……」フィオーネの肌が熱を持ち、バラ色に染め上げていく。……俺に感じている。自分が呪いに蝕まれているという状況なのに、嬉しくてたまらない。そっと下腹部に手を触れてみた。「んんっ!」フィオーネの身体がびくりと跳ねる。彼女はシーツを濡らすほどに潤っていたのだ。何て感度がいいのだろう。「フィオーネ……」身体をずらし、フィオーネの下腹部に顔を埋めると、最も感じる部分を舌で舐めあげた。「ああぁっ!」先程以上に甘い声を出すフィオーネ。もっともっとその甘い声が聞きたい。彼女のナカに舌を差し込み、内壁を舐めあげるとフィオーネは涙を浮かべながら身体を震わせる。「あ……あっあっあぁん……そ、そこ……は……あっああっ……だ、駄目……わ、私……へ、変になっちゃ……」「奇麗だ……フィオーネ。もっと……もっと乱れた姿を見せてくれ……」舌を這わせながら懇願すると、快感を逃す為なのだろう。「い、いやあ……そ、そこで喋らないで……」フィオーネが首を左右に振る。そろそろ限界が近いのかもしれない。後から後から溢れ出てくる彼女の甘い蜜を味わいながら、フィオーネが感じる部分を口に含んで吸い上げた。「ああんんっ!」ビクンとフィオーネの身体が弓なりにしなる。どうやら達したようだ。はぁはぁと荒い呼吸を繰り返し、ベッドに沈み込むフィオーネ。彼女を見